コラム 2025.07.08 2025年、中国通信業界展望：5G-A、低空経済、衛星通信が切り拓く次のステージ

2025年、中国の通信業界は大きな転換期を迎えています。5G-Advanced（5G-A）や衛星通信、低空経済といった新たなキーワードが次々と登場し、政策・市場・技術の三位一体で進化を遂げようとしています。本記事では、KDDI総合研究所のレポートをもとに、2025年の中国通信業界の展望を多角的に解説します。

中国政府は2025年、5G-Aと5G RedCapの普及を加速させるとともに、低空経済や衛星通信といった新興分野の育成に注力しています。特に「低空経済」は、ドローン配送や空中タクシー、スマート農業など多様なユースケースを内包し、2035年には72兆円規模に達する見込みです。

また、通信インフラを活用した高齢者向けサービスの拡充も進められており、「シルバーエコノミー」への対応も重要な政策課題となっています。

通信キャリア各社（MNO）は、自社開発の大規模言語モデル（LLM）を活用し、AIを組み込んだ通信サービスを展開しています。たとえば、「九天」「Kunlun」「元景」「星辰」などのAIモデルを基盤に、生成AI通話アシスタントやスマートホーム端末が登場しています。

さらに、次世代北斗衛星システムや中国版スターリンクの構築が進み、衛星通信端末の普及も加速。政府は端末購入補助金（最大500元）を通じて、通信端末の需要を後押ししています。

2025年は、6Gネットワーク構築に向けた包括的な計画が策定される年でもあります。中国移動や中国電信などの主要キャリアは、宇宙地上統合ネットワークやIoT NTN（非地上ネットワーク）などの先進技術を活用し、6G時代の到来に備えています。

また、AI技術の標準化や国家データインフラの整備も進められており、スマートシティやスマートホームの実現に向けた基盤が着実に構築されています。

通信業界の周辺市場も活況を呈しています。北京市では2025年4月から自動運転車条例が施行され、スマートインフラと通信ネットワークの融合が進行中です。さらに、ByteDanceの「豆包（Doubao）」など、生成AIを活用したアプリが急速に普及しており、通信とAIの融合が新たなユーザー体験を創出しています。

中国通信業界の進化は、単なるインフラ整備にとどまらず、社会全体のスマート化を推進する国家戦略の一環です。日本企業にとっては、以下の点が注目ポイントです：

• 5G-AやRedCapを活用した法人向けソリューションの展開
• 衛星通信や低空経済に関連するハードウェア・ソフトウェアの提供
• 高齢者向けスマートサービスやスマートホーム分野での協業機会

中国市場における通信・デジタル分野の動向を把握し、戦略的なアプローチを検討することが、今後のビジネス展開において重要となるでしょう。